「音楽的な顔をした」と譬えられるほど美しい、岡田准一演じる透と
「40代はまだお姉さんだったんだ」と、ヒロイン詩史を通して世に知らしめた初の女性、黒木瞳。
夜の東京タワー、ノラ・ジョーンズの情緒的な音楽。
美で彩られたこの映画の中に登場したジュエリーアイテムも、美そのものだった。
セレクトショップで見つけた神秘的で美しいダイヤモンドクロスネックレス。
それを手に取った瞬間、透は運命の人に出逢う。
「恋はするものじゃなく、落ちるものなんだ」
詩史との出逢い、別れ、ラストと、その重要な場面に必ず映し出される白い十字架。
このアイテムが示唆するものは「運命」である。
透の繊細で純粋な想いと、その美しい容貌には、美しいクロスモチーフでなければ、相容れなかったに違いない。
ダイヤモンドが埋め込まれたクロスは光り輝き、甘さのない、神聖な空気を漂わせる。
神聖なもの。
透にとってはまさに詩史がそれだった。
「詩史さんは小さくて綺麗な部屋だった」
詩史の愛した音楽を聴き、詩史の愛した詩を読み、詩史で埋め尽くされた自分だけの聖地を創り上げてしまう。
人が魅かれるものには、神性が宿っている。
だからどうしようもなく惹かれ、盲目的になっててしまうのだ。
イーゼルにかけられたクロスネックレス。
窓から射しこむ日差しを受けて煌めくダイヤモンドと、痛みを昇華して微笑む透が美しい。
「壊れたおもちゃはいらないの」
愛する人に無残に捨てられた後パリへ渡り、それでも変わらぬ想いを持ち続けた透に起こった奇跡。
「明日、あなたの気持ちが離れても、愛してる」
クロスモチーフの与える効果は「奇跡」である。
奇跡とは、人の心の奥底にある潜在意識が起こすものだ。
クロスモチーフは、その人の潜在能力を引き出し、セットされたダイヤモンドが、その力を増幅する。
黒木瞳は、同作の関連著書でラストについて語っている。
「私だったら、パリへはいかない」
永遠の愛が欲しいから。
だからラストの台詞は理想なのだと。
世の中にある幸せの形は人それぞれだ。
あなたならどうだろう。
どっちにしろ、ダイヤモンドのクロスネックレス。
恋するように惹かれたなら
運命の出逢いを与えてくれるかもしれない。