日本はアメリカに次ぐダイヤモンド消費国である。(現在は中国が2位)
「ダイヤモンドは永遠の輝き」という
人類史上最も成功したであろうデビアス(強大なダイヤモンド産業の中核)
のキャッチコピーにより、ダイヤモンドリングは愛の証となった。
エンゲージリング。
女性が人生で最高の幸せを味わう瞬間。
その指に輝く宝石の背景に、深い闇と悲惨な現実があることは知らないほうが良いのだろうか。
ダイヤモンド戦争。
ダイヤモンドの産地アフリカ12カ国以上を巻き込み、繰り広げられた内戦。
悪夢の始まりは1975年にさかのぼる。
アフリカのアンゴラ。
1カラット200ドルという最高級のダイヤモンド産地である。
ポルトガル人による植民地政府を追い出したその国は政権を奪い合い分裂した。
一方はダイヤモンドが採れる河川を、もう一方は海底油田を収入源として内戦を繰り広げる。
前者のアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)を支援するのはアメリカ、
後者のアンゴラ解放人民運動(MPLA)を支援するのはソ連。
アンゴラの豊富な資源を獲得するための大国同士の思惑が絡み、尽きることのない資源は軍事資金を増大させ、内戦を長引かせた。
内戦は1994年の和平協定まで、20年にもわたった。
その中の1992年から1999年にかけて、アンゴラ内戦による死者は50万人。
一方ダイヤモンドによる収益は40億ドル(当時約4000億円)である。
ダイヤモンドはもはや武器を手に入れる手段ではなく、
利益を得るための道具となり、戦争の理由となってしまったのだ。
ダイヤモンドが軍を呼びこむ アフリカ世界大戦
ダイヤモンド戦争はついに商業活動となってしまった。
1998年~2003年
アンゴラの隣のコンゴで起こった2度目の内戦でも資源獲得が原因となった。
コンゴはもちろんのことナミビア、ジンバブエ、アンゴラ、ウガンダ、ルワンダ、の軍隊が資産を得ようと介入する。
その数約3万5000。
その裏で、10万の市民は殺され、130万の難民は飢餓や伝染病に苦しんだ。
最も残虐な シエラレオーネ内戦
1991年~2002年
政府軍と反政府軍RUFはダイヤモンド鉱山の支配権獲得をめぐり交戦。
死者は7万5000にも達し、家をなくした人々は200万人以上。
国民の8割である。
この戦争が最も嫌悪されるのは、一般市民への残虐性である。
政府に加担しないよう手足を切り落としたのだ。
これはこの内戦の象徴となっている。
薬でラリった兵士は正気を失い、想像も出来ない残虐行為を行う。
妊婦子供にも容赦はない。
少年たちは誘拐され殺し屋として育てられる。その数20万人以上。
このダイヤモンド盗賊RUF反政府軍に加勢したのが隣国リベリアである。
反政府軍は密輸ダイヤをリベリアに渡して武器を受け取り、
リベリアは、受け取ったダイヤモンド原石を国内で産出されたダイヤと一緒にして、ダイヤモンド交易地へ出荷する。
アントワープ(ベルギー)やテルアビブ(イスラエル)ボンベイ(インド)
ダイヤモンド研磨地に集まる世界の合法的ダイヤに紛れ込めば、もはや紛争ダイヤとの区別はつかない。
お分かりだろうか。
本当に背筋が凍るのはここなのだ。
受け取るダイヤモンド業者が、その本当の出所を知らないはずはない。
ダイヤモンドが武器に変えられることを黙認していたということだ。
そして事実を知らない消費者は、デビアスのキャッチコピーにのせられ給料の3か月分を払いダイヤを買う。
その指輪のために手を切り落とされる人たちがいるとは知らずに、だ。
今でもシエラレオネで手を失った老若男女は何万人もいる。
内戦の裏には大国の利権や思惑が潜んでいる。
そして無知であることは罪なのだ。
恐怖、憎しみ、怒り、悲しみ、絶望、を抱きながら、多くの罪なき、力なき人々が血を流している
一方で
ダイヤモンド消費国の人間はダイヤモンドの煌めきに魅せられ、金を払う。
知らぬとはいえ戦争に加担していた。とは言えないだろうか。
キンバリープロセス設立
1998年、グローバル・ウィットネスというNGO団体の告発により突如紛争ダイヤモンドは世に知れ渡り、
ダイヤモンド業界と黙認していた国らは追い詰められる。
人の命と引き換えだと分かればダイヤを買う人はいなくなる。
ダイヤモンド不買運動。
業界存亡の危機である。
事態を重く見た国連や合衆国議会は動き出し、武器の売却を黙認していた英国政府もこの問題に助成した。
アンゴラ産ダイヤの3分の2を所有していたデビアスもアンゴラの購買所を閉鎖。
紛争ダイヤに背を向けたのだ。
2000年、アントワープで会議が開かれ、
2002年キンバリー・プロセス(産出地から販売地までのルートを把握し、紛争ダイヤの売買を阻止する)が設立された。
ディカプリオ扮するダイヤモンド密輸業者が語る密輸ルートの話に真実が語られている。
この事実を知った時、ダイヤモンドが色あせて見えた。
なんという商売に関わっていたのだろうと思った。
だが、ダイヤモンドに罪はない。
ダイヤモンドの輝きに嘘はない。
罪を犯すのも嘘をつくのも
いつだって人間なのだ。
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